【2018年版】飲食店のための小規模事業者持続化補助金申請マニュアル 制度解説編
応募書類や記載要領はこちらのホームページから。事業実施場所により日本商工会議所か全国商工会連合会で異なりますのでご確認ください。なお、当ブログでは日本商工会議所の資料をもとに解説しています。
(1)対象者
小規模事業者の会社及び個人事業主が対象です。業種別に小規模事業の定義が決まっており、飲食店経営であれば、「常時使用する従業員の人数が5人以下」であれば対象になります。
(1−1)従業員の人数とは?
家族従業員を含めた正社員の人数と考えてもらってOKです。
人数に含める人 | 飲食店経営に専従している家族従業員(事業主の奥様など)、正社員、従業員との兼務役員 |
人数に含めない人 | 事業主本人、会社の場合は役員(従業員兼務役員は含める)、パートアルバイト |
※ただしパートアルバイトでも、正社員と同じくらいの時間を働いている人は人数に含めます。要件の詳細は記載要領で確認ください。
(1−2)複数事業をしている場合は?
飲食店と小売店を併設しているなどの複数事業を行なっている場合は、メインの事業で申請します。この場合の従業員人数の判定は全事業の合計人数になります。また、補助金を申請する事業はメイン事業でも他の事業でもどちらでもOKです。
(2)補助対象経費
販路開拓の目的であれば、幅広く認められます。ただし、経費の費目ごとに認められるものと認められないものがはっきり分かれていますので注意が必要です。
(2−1)補助対象となる取り組み
具体的には、以下のような取り組みに使えます。
公募要領(平成29年度補正予算分)から抜粋
- 新商品を陳列するための棚の購入
- 新たな販促用チラシの作成、送付
- 新たな販促用PR(マスコミ媒体での広告、ウェブサイトでの広告)
- 新たな販促品の調達、配布
- ネット販売システムの構築
- 国内外の展示会、見本市への出展、商談会への参加
- 新商品の開発 ・新商品の開発にあたって必要な図書の購入
- 新たな販促用チラシのポスティング
- 国内外での商品PRイベントの実施
- ブランディングの専門家から新商品開発に向けた指導、助言
- (買物弱者対策事業において)移動販売車両の導入による移動販売、出張販売
- 新商品開発に伴う成分分析の依頼
- 店舗改装(小売店の陳列レイアウト改良、飲食店の店舗改修を含む。)
- ※「不動産の購入・取得」に該当するものは不可
飲食店で特に使えそうなのは、店舗改装や備品購入関係の経費、販促チラシの配布、マスコミ媒体やウェブサイトでの広告、新商品開発(新メニュー開発)関連の経費などが多そうですね。
・業務効率化の費用も認められる?
当補助金は、販路開拓のための取り組みを対象としていますが、販路開拓と合わせて行う業務効率化についても補助の対象となっています。ただし、あくまで「販路開拓と合わせて」というところがポイントですので、単に業務効率化のために機械を購入するなどは対象となりません。
具体的には以下のような取り組みに使えます。
公募要領(平成29年度補正予算分)から抜粋
【「サービス提供等プロセスの改善」の取組事例イメージ】
- 業務改善の専門家からの指導、助言による長時間労働の削減
- 従業員の作業導線の確保や整理スペースの導入のための店舗改装
【「IT利活用」の取組事例イメージ】
- 新たに倉庫管理システムのソフトウェアを購入し、配送業務を効率化する
- 新たに労務管理システムのソフトウェアを購入し、人事・給与管理業務を効率化する
- 新たに POS レジソフトウェアを購入し、売上管理業務を効率化する
- 新たに経理・会計ソフトウェアを購入し、決算業務を効率化する
実は、ITを活用した取り組みかどうかは審査上の加点項目になっていますので、導入をお考えの方はこの機会にぜひ検討されてはいかがでしょうか。
(2−2)補助対象金額
補助金を受け取るためには、書類を作って補助金事務局の審査を通過しなければいけません。無事に審査を通過すれば、補助対象経費の3分の2以内で、上限額が50万円が補助されます。
・上限額アップの要件
以下のいずれかに該当する場合には、補助対象金額が50万円から100万円にアップします。
- 従業員の賃金引き上げ
- 買い物弱者対策
- 海外展開
それぞれの詳細は割愛しますが、これらの要件の適用を考えている場合は、必ず公募要領で確認してください。それぞれ細かい要件がありますので、適用の際には注意が必要です。
この他にも、複数事業者で連携して取り組む場合には補助上限が100万円から500万円になりますが、申請数は多くないと見込まれますので、当ブログでは詳細の解説を省略しています。
(2−3)補助金を受け取る注意点
・補助金は後払い
良くある誤解ですが、審査を通過したらすぐに補助金がもらえるわけではありません。先に自分で立て替えて、使用した経費の実績を報告して後払いで補助金を受け取る形になります。
ですので、先に立替払いができるぐらいの資金がないと補助金を受けることができません。(個人飲食店はこの点が結構厳しかったりします。)もし、手元資金がなくても補助金に挑戦したいという方は、補助金分だけ融資を受けることは可能ですのでご検討ください。
・支払いや契約は採択後に
無事に審査を通過すると、まずは「採択通知」が送られてきて、その後に「補助金交付決定通知書」が送られてきます。
「決定通知書」が届くより前に支払ったり契約した経費は補助金の対象とはなりません。例えば、現在契約しているインターネット広告のうち何ヶ月分かを補助してもらうなどはNGです。
(2−4)補助対象となる経費
具体的には以下の項目になります。
公募要領(平成29年度補正予算分)から抜粋
①機械装置等費、②広報費、③展示会等出展費、④旅費、⑤開発費、⑥資料購入費、⑦雑役務費、⑧借料、⑨専門家謝金、⑩専門家旅費、⑪車両購入費、⑫設備処分費、⑬委託費、⑭外注費
以下では飲食店で申請する場合に、特に気をつけたいところだけピックアップして解説します。
・機械装置等費
公募要領(平成29年度補正予算分)から抜粋
【対象となる経費例】高齢者・乳幼児連れ家族の集客力向上のための高齢者向け椅子・ベビーチェア、衛生向上や省スペース化のためのショーケース、生産販売拡大のための鍋・オーブン・冷凍冷蔵庫 等
【対象とならない経費例】・パソコン・タブレット端末(これらの支出は全て汎用性が高いものと して対象外となります。)
iPadレジなどを導入するとしても、タブレット端末は対象にならないのは注意が必要ですね。
・広報費
公募要領(平成29年度補正予算分)から抜粋
【対象となる経費例】ウェブサイト作成や更新、チラシ・DM、新聞・雑誌・インターネ ット広告、看板作成・設置、販促品(商品・サービスの宣伝広告が掲載されている場合のみ)
【対象とならない経費例】名刺、商品・サービスの宣伝広告を目的としない看板、補助事業期間外の広告の掲載や配布物の配布、売上高や販売数量等に応じて課金される経費、ウェブサイトのSEO対策等で効果や作業内容が不明確なもの
飲食メディアへのインターネット広告を考えている方は注意が必要です。掲載は補助金対象となりますが、あくまで補助事業期間内ですので、補助の対象になるのは最長でも4ヶ月-5ヶ月分程度の掲載料です。(補助事業期間については下段の「スケジュール」の項目を参照ください。)
インターネットからの予約数によって課金されるメディアは「売上高や販売数量等 に応じて課金される経費」と考えられますので、こちらも補助対象外ですね。ご注意ください。
・開発費
公募要領(平成29年度補正予算分)から抜粋
【対象となる経費例】新たな包装パッケージに係るデザインの外注
【対象とならない経費例】(包装パッケージの開発が完了し)実際に販売する商品・製品を包装するために印刷・購入するパッケージ分
新商品のパッケージデザインはOKですが、包装費の実費はNGですね。
・専門家謝礼、委託費
コンサルタントなどから助言をもらう費用もOKです。ただし謝礼の支出基準がありますので、こちらは詳細を公募要領でご確認ください。
・外注費
公募要領(平成29年度補正予算分)から抜粋
【対象となる経費例】店舗改装・バリアフリー化工事、利用客向けトイレの改装工事、移動販売等を目的とした車の内装・改造工事、従業員の作業導 線改善のための従業員作業スペースの改装工事
【対象とならない経費例】単なる店舗移転を目的とした旧店舗・新店舗の解体・建設工事、住宅兼店舗の改装工事における住宅部分、既存の事業部門の廃止に伴う設備の解体工事
販路拡大や業務効率化の目的がある工事はOKですが、ボロボロになってきた内装を補修したいだけなどの工事はNGです。
・その他の注意点
公募要領では、補助対象経費について以下の要件が定められています。
公募要領(平成29年度補正予算分)から抜粋
補助対象となる経費は、次の①~③の条件をすべて満たすものとなります。
- 使用目的が本事業の遂行に必要なものと明確に特定できる経費
- 交付決定日以降に発生し対象期間中に支払が完了した経費
- 証拠資料等によって支払金額が確認できる経費
①はもちろんですが、②には特に注意してください。すでに説明しましたが、補助金交付決定通知書が来るまでに使った経費は、補助対象となりません。すぐに購入したたくても通知書が来るまでは我慢しましょう。
また、③も要注意です。補助対象となる経費は、全て証拠資料を集めて報告しないといけないので、旅費などを含めて細かい経費を多数申請すると、実施した後の報告資料の作成が大変になります。後々の報告資料の作成を考えると、申請する費用は金額が大きいもの数点に絞って申請するのが良いでしょう。
(3)申請方法とスケジュール
(3−1)申請方法
以下の手順で申請します。
- 提出資料である「経営計画書」「補助事業計画書」を記載し、事業を行なっている地域の商工会議所等に相談に行きます。
- 商工会議所等から指導や助言を受けて、「事業支援計画書」を作成してもらいます。
- 必要書類をまとめて補助金事務局(日本商工会議所もしくは全国商工会連合会)に郵送で提出
補助金の審査上は、特に「経営計画書」「補助事業計画書」の作り込みが重要になります。しっかり考えて作り込んだものを商工会議所等に持ち込みましょう。
(3−2)スケジュール
スケジュールは以下のようになります。
・申請締切
2018年5月18日
当日の消印有効です。ただし、提出書類には、地域の商工会議所等が作成する「事業支援計画書」が含まれてますので、この書類を作成してもらう時間を考えて、「経営計画書」「補助事業計画書」を作成しないといけません。
公募要領の表紙には、出来るだけ締切の1週間前までには地域の商工会議所等に行って下さいと書かれています。申請遅れになってしまわないように極力早めに持ち込みましょう。特に申請数が多い都市圏では早めの持ち込みが無難でしょう。
・採択公表
2018年7月中
採択結果が公表された後に、交付決定通知書が届きます。前段で説明しましたが、この通知書が来るまでは申請した経費は使用してはいけませんので注意してください。
・補助事業の実施期間
2018年12月末まで
交付決定後に補助事業で申請した取り組みを実施します。少なくとも2018年12月までには取り組みを完了させてなくてはいけません。完了後には報告資料を作成して提出します。
・補助金の入金予定
(おそらく)2018年3月末までの見込み
こちらは公募要領に明記されていませんが、当事務所が同じ補助金を受けた際には、実績報告が完了してから約1ヶ月で入金されました。ご参考までに。
(4)採択率
補助金の採択を決めるのは、「経営計画書」「補助事業計画書」の内容です。面接などはないので、書類の出来栄えが全てです。では、今回の採択率はどの程度と見込まれているのでしょうか。
実は、採択率は正式に公表されていません。地元の商工会議所に問い合わせて見ましたが、採択率はおそらく10%-20%程度とのことでした。使い勝手の良い補助金ですので、年々難易度が上がっている実感はあります。
当補助金に関連する予算は以下の通りで、今年は前年と同額の予算となっています。
平成27年度(前々回) 予算100億円、採択予定者12,000者
平成28年度(前回) 予算120億円、採択予定者15,500者
平成29年度(今回) 予算120億円、採択予定者20,000者
(5)今年度の加点項目
今年度の政策的な加点項目について、以下にまとめました。
(5−1)事業承継の加点
前年度の追加募集時から加わりましたが、代表者が60才以上で後継者が中心となって補助事業に取り組む場合は、審査で加点されます。この場合、「事業承継計画書」を作成して提出することになります。
(5−2)生産性向上の加点
生産性向上特別措置法に基づいて、導入した設備の固定資産税の減免を申請することできます。こちらを申請予定の方は加点対象となりますが、飲食店では利用が少ないかと思いますので、詳細の説明は割愛します。
(5−3)経営力向上計画の加点
中小企業等経営力強化法に基づく「経営力向上計画」の認定を受けている事業者は加点されます。こちらは平成30年2月28日までに認定を受けている事業者が対象になります。こちらも詳細の説明は割愛します。
(5−4)過疎地域の加点
過疎地域自立促進特別措置法の過疎地域の事業者については加点対象となっています。特に追加で作成が必要な書類はありませんので、対象地域の方は自動的に加点対象となります。
当補助金は、より多くの事業者へ補助を行いたい意向があるため、過去の補助金受給者は審査上減点されます。つまり、まだ補助を受けていない方が優先されますので、初回挑戦の方は是非頑張って申請してください。